外国人旅行者を案内する通訳ガイドは、日本人の中でも英語のプロ中のプロとして、相当なスキルを持っているイメージがあると思う。そこで、Atlasでは札幌、東京、横浜、名古屋、大阪・京都市内でガイドをしている人たちに取材をしてみた。まず訪れたのは外国人旅行者のメッカである京都・嵐山と東京・浅草だ。
ここでガイド歴10年以上の2人のガイドが共通して語ることは、「よりシンプルな英語で、難しい説明をしずぎないようにします」ということだった。2人とも案内の仕事をしながら自分なりに説明を考え、表現を蓄積してきたようだ。
今回、2人は別々に12人の外国人観光客を案内した。アメリカ人3人、イギリス人2人、フランス人5人、オーストラリア人が2人の合計4組。案内の合間には笑いが湧き、様々な質問が飛び交う。聞いてみると、やはり日本人の日常生活に関する質問が多いようだ。
東京の浅草寺は都内最古の寺として有名だが、ガイドはマニュアル通りには説明しない。京都の金閣寺のガイドもそうだが、外国人が興味を持ちそうなことに着目し、おみくじや絵馬など実物で説明している。
実際、旅行案内にはどれくらいの英語レベルが必要なのか聞いてみた。それには、英語の流暢さよりも、おもてなしの心が大切だとガイドたちは話す。ボランティアガイドの多くは、自分たちが海外で助けてもらった恩を返したい、という強い動機があるようなのだ。
次に訪れたのは札幌の隣町である小樽。案内してくれたのは、通訳案内士(中国語)の有資格者でプロ通訳士の経験を持つが、言葉に依存せずに臨場感を出す工夫を惜しまないような方だった。
今では博物館になっている旧日本銀行小樽支店では、日本の紙幣をポケットから取り出し当時と今のお金にまつわる小ネタで興味を引いていたのが印象的だった。日本を深く知り、外国人とシェアしていく。質疑応答のやり取りでさらに英語力を上げていく。旅行案内は英語の実践力を上げる最高の機会なのだろう。
2015年の訪日外国人観光客は、あとちょっとで2000万人には届かなかったが2016年はさらに20%以上伸びると予想されていている。
プロの案内ガイドになるには、まず通訳案内士の資格が必要だが、ボランティアなら誰でもチャンスはある。最近、帰国した日本人留学生たちが日本全国の大都市や観光地で自主的に英語ガイドのボランティアをしているという。
その多くが海外留学を通じて得た経験を社会に還元したいと話している。また、自主的に外国人に働きかけるので、留学していたときよりも英語を多く使っている感じがあるらしい。
外国人観光客と一口で言っても、来日経験も興味も様々だ。旅行者のあらゆるニーズに答えるには、日頃の情報収集がすべてだ。Atlasマンツーマン英会話の外国人講師数人にインタビューし、外国人観光客に受けるネタ探しのコツについて聞いてみた。
「日本に来たばかりの外国人の視点としばらく日本に住んで得た生活者の視点を両方見ながら、自分の心が動かされる場所や情報を集めています」
その際、気をつけることが伝統的な日本の要素と新鮮さを同時に入れることだそうだ。たとえば、抹茶という伝統的なモノを提供するカフェのような発信のポイントとしての面白さということだろうか。
集めた情報を蓄積し、自分ならではの表現で相手に伝えていく。滝川クリステル氏が東京オリンピック誘致のプレゼンで行ったおもてなしの精神とちょっとの勇気と努力があれば、英語力もアップすることだろう。
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