以前、通訳を数年間していた私の経験では、外国人投資家というと、企業のマネジメントやM&Aのような戦略について要求してくるような厳しいイメージを想像しがちだが、実際は違う。ほとんどの外国人投資家は、感情を露わにすることなく冷静に話を聞いてくれる。
日本企業側の海外部門の社員は、海外投資家との会談を終えた後、意外と優しいことに拍子抜けすることが多いのだ。しかし、その数日後にその企業の株が売られてしまうこともよくあることだ。
外国人投資家は、その企業の経営がどうあるべきかなどの議論をすることを目的としていない。彼らはただ経営者や幹部の考え方や成長戦略について質問し、そこで不合格なら株を売ってしまうし、合格だと判断すれば株を買うのだ。
これまで数百社の日本企業で、外国人投資家に向けて情報発信をしていたとき、日本企業は外国人投資家が自社の株を買ってくれるよう、IR活動などで自分たちの魅力をアピールする必要がある。
通訳の仕事は、会談時間が約1時間の中で伝えたいことをよりコンパクトにまとめることがメインとなっている。そして、外国人投資家がメモをしっかりと取れるようにゆっくり話すことが大切になる。
収益などについても、多くの日本人はアベノミクスが何やら、原油価格が何やらと、ダラダラと話してしまう傾向があるが、そんな場合でも、その人が言いたいことを3つほどのポイントにまとめて、外国人が理解しやすいロジカルに組み直してから英語に訳していく。
そうずればメモも取りやすく、投資家も常にテンポよく質問できるようになる。外国人に理解しやすいロジカルの構造を学ぶには、毎日海外メディアの英文を読んで、その構造を参考にすることしかない。
相手が使った単語を使って答えるテクニックも効果的だ。そうすることで、自分の話を企業がきちんと聞いてくれるので、外国人投資家を納得させることができるだろう。これだけで英語でのコミュニケーション力は上がるのだ。
多くの外国人投資家は、「欧米の企業と大きく違い、日本や中国、東南アジアの企業はしっかり質問しないと言いたいことがよくわからない」と考えている。日本企業のIR情報を見ると、美辞麗句がよく並ぶが、外国人投資家たちが知りたいのは、その会社が成長のためにどのようなリスクを取っているかだけだろう。
最近、日本企業以外のアジア人を見ていると、彼らは英語が下手でもがんばって自信満々に説明している。その勇気と努力を日本人も見習わないといけないと思う。
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